リスク認知

東日本大震災を契機をして,リスクに関する書籍を企画し,昨年に中谷内一也編『リスクの社会心理学』を刊行しました。震災以前から,行動経済学や環境問題の話題との関係の中からリスク認知に関する書籍が何かできないかなと模索していたのですが,震災や原発リスクにまつわる様々な思い,そして言説に触れるにつれ,社会の中でのリスクの共有やリスクコミュニケーションといった視点も組み入れたいと思いました。

で,『リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか』『安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学』などの著作を刊行されていた中谷内先生にご相談に行きました。中谷内先生の問題意識ともうまく一致することができ,多彩なご執筆の先生方のお力をお借り,ほぼ予定通りのスケジュールで刊行できたのは大変ありがたいことでした。

刊行を通していくつかの関連書籍を知ることができましたので,少し紹介したいと思います。さしあたって,リスク認知に関連する書籍です。

意外とリスク認知でまとまった本は少ないと思うのですが,岡本浩一『リスク心理学入門―ヒューマン・エラーとリスク・イメージ』や広田すみれ・増田真也・坂上貴之編『心理学が描くリスクの世界〔改訂版〕—行動的意思決定入門』あたりでしょうか。これらは第1章から第4章あたりと関連します。

他に,読み物的なものとして,『リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理』やギーゲレンツァー『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで』なども面白いと思いました。これらは感情の問題も扱っています。リスク認知は単純な認識の問題ではなく,感情が強くからんでくることは,中谷内一也編『リスクの社会心理学』の第4章でも述べられています。ギーゲレンツァーはいくつか著作が翻訳されています。

また,第5章では心理学や社会科学の専門家ではなく,工学からの科学技術的なリスク・アセスメントの考え方についての章があるのが,やや異色だと思います。が,この章は(若干難しいのですが),他ではふれることの少ない知見にふれることができ,興味深い章になっていると思います。これらについてのわかりやすい入門書もおそらくあるのだと思いますが,私はよく知りません(誰か教えてください)。やや違うのかもしれませんが,日本のリスク学の第一人者である中西準子『環境リスク学―不安の海の羅針盤』は,自身の半生を振り返りつつ,環境リスクについてどのように研究をしてきたかが,どういった視点が重要かが扱われています。大学内での扱いなどにも言及されており,社会構造的な問題も見え隠れします。

第6章では一般人と専門家の溝(つまり,リスク認知の違い)が扱われているのですが,これは第II部のリスク・コミュニケーションなどにもつながっていく知見であろうと思います。

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